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中小企業の事業継承時の「7つのポイント」とブランディングの重要性(事業継承・ブランド開発)

 

事業承継を円滑に行うための7つのポイント

 

中小企業の経営者は毎日仕事で忙しいと思いますが、将来誰に事業を譲り渡すのかを考えておく必要があります。世間に広く認知された企業は、経営者が交代しても一つのブランドとして運営し続けなくてはなりません。

 

しかし、中小企業では経営者自身が事業運営の要となるため、有能な経営者が第一線を退いた後に、企業業績が一気に悪化することも珍しくありません。企業業績が悪くなることで、従業員や取引先が深刻な事態な陥り、それまで蓄積していた優れた業績やブランドが消えてなくなってしまう可能性があります。

そして、企業としての価値が高い程、経営者の肉親や社員などによる後継者争いが激しく行われ、ブランドの価値が低下して業績が悪くなる事態となってしまいます。次の時代にも企業が生き残るためには、円滑な事業承継が必要となるのです。

ここでは事業承継を円滑に行うためのポイントをご紹介いたします。

 

 

1.現経営者が率先して「方針」を決める

 

まず、企業の実権を握る経営者が、次の経営者を決める態度を明確に示しましょう。経営者の進退について意見を言える人は社内にいませんので、経営者自らが事業承継の方針を決めないと、いつまで経っても問題が先送りになるだけです。

まだ働き盛りの年齢でも突然体調を崩すこともありますし、家庭の事情で事業に専念できない事態になる可能性もあります。優れた経営者を育てるには時間が掛かりますので、早目に事業継承の問題を考えましょう。

 

 

2.ひとりで抱えず、専門家とともに「事業承継計画」を作る

 

事業承継のことを経営者一人で抱え込まずに、弁護士や中小企業診断士などの外部の専門家に相談することも大切です。自分の会社のことは、経営者が一番良く知っていますが、第三者の意見も尊重するようにしましょう。

事業承継には、長期的な視野や法的な手続きが必要となりますので、専門家の意見を聞きながら、事業承継計画を検討するのが一番です。適切な計画を立てないと、経営者が交代した途端に企業の存続が難しくなってしまいます。その他にも、商工会議所や中小企業基盤整備機構で、事業承継に関する相談などを行うことができますので、将来のことを気軽に話してみてはいかがでしょうか。

まずは、事業承継について具体的に考えることで、どのような形で事業を継続するべきか、後継者は誰が良いのかなどが分かってくるでしょう。

 

 

3.後継者は親族だけと安易に決めず、M&Aも視野に

 

誰を後継者にするかという問題も、極めて重要な問題となります。肉親を後継者にするのが一般的ですが、経営能力があり従業員が納得してくれる人物でなくては上手く行きません。経営者の長男・長女だからと安易に決めるのではなく、経営者になって上手く事業運営できる人を選ぶことが大切です。

子供に経営者としての素質やヤル気が感じられないようなら、他の親族の中から探すようにしましょう。もしも、親族に適任だと思える人がいないのであれば、社内から経営者に相応しい人を探したり、M&Aにより会社を売却することも視野に入れる必要があります。M&Aは合併と買収を意味する英語の頭文字を取ったもので、後継者がいない多くの中小企業がM&Aを利用するようになりました。

従来はM&Aに悪いイメージがありましたが、最近は従業員の雇用や取引先の仕事も維持できるので、否定的なイメージもなくなりつつあります。経営者も会社を売却することで、多額のお金を手にすることができるので、安定した生活を送ることができます。

M&Aには合併・株式譲渡・事業譲渡など様々な方法がありますので、どの企業にも適したM&Aを見付けられる筈です。M&Aを、後継者が見付からなかった時のための手段として検討しておきましょう。

 

 

4.後継者の育成は焦らず、時間をかけて

 

後継者候補が見付かった場合には、経営者としての能力を鍛えるようにしましょう。すぐには、会社の運営をする実力はありませんので、社内の様々な業務を経験させたり、社外とのやり取りを担当させて、少しずつ教育して行くことが肝心です。

自社内で教育するだけではなく、他社に勤務させて別の会社の経営方法を学ばせたり、関連会社の経営を任せて経営者として実績を積ませることも良く行われえる教育方法です。会社を経営するには、幅広い視野と数多くの経験が求められますので、様々な教育を行って経営能力を高めるようにしましょう。

実際に会社を経営している人から見えれば、多くの点で物足りなく感じるでしょうが、時間を掛けて立派な経営者に育てて下さい。

 

 

5.生前贈与か遺言か、遺留分減殺請求にも注意

 

経営承継を円滑に行うためには、会社の株式や事業用の財産を後継者に譲る準備もしなくてはなりません。生前贈与や遺言によって財産を譲ることになりますが、各方法の特徴などを理解しておきましょう。

生前贈与は、経営者が元気な内に後継者に財産を渡す方法です。贈与契約書を作ったり財産の名義変更をすることで、確実な後継者への財産の移転が完了します。生前贈与すると撤回できませんので、慎重に考えて実行するようにしましょう。

遺言は自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類が、主に使用されます。自分で遺言書を作成する自筆証書遺言は費用も掛からず簡単に書くことができますが、形式に不備があったりすると無効になってしまうこともあります。簡単に作ることができますが、偽造や紛失の対策が必要です。公正証書遺言は、遺言者が証人となる人と一緒に公証役場に行って、公証人が遺言を筆記して作成するものです。遺言書を作成するために費用と手間が掛かりますが、向こうになる恐れがないので、思った通りに事業用の財産を譲渡することができるでしょう。

事業承継するタイミングや移転する財産などのことを総合的に考えて、生前贈与と遺言のどちらにするのか決めることになりますが、中小企業の場合は経営者が個人的に所有する土地や建物などの資産を事業用に使っていることが多いので、確実に財産が譲与されることを優先させましょう。財産を生前贈与や遺言書によって後継者に譲ろうとしても、他の法定相続人が遺留分減殺請求を行うと、思った通りの事業承継が難しくなります。

遺留分減殺請求とは、法律で定められた分より少ない財産しか相続できなかった法定相続人が、法定相続分より多く相続した人に対して、相続した財産を渡すように請求する手続きです。後継者以外の法定相続に事情を説明して、遺留分減殺請求を行われないように納得してもらうようにしましょう。今まで使用していた資産が急に使えなくなると、正常に業務を行えない事態に陥ります。

 

 

6.節税対策に必要な「特別措置」の条件を確認し十分な準備を

 

中小企業の事業承継に伴う財産の譲渡については、通常の財産分与と異なる税制措置が利用できます。税制に関する特例措置を利用することで、相続税・贈与税・所得税などについて特例措置を受けることができるのです。

具体的な税制措置の内容としては、相続税の80%の納税が猶予される制度や株式の贈与税を猶予する制度などです。この特例措置によって節税をすれば、スムーズな事業承継が可能となるでしょう。ただし、特例措置を受けるためには、中小企業基本法の定義で中小企業に分類されること・後継者が先代の経営者の親族であること・相続する直前に後継者が会社の役員であったことなどの条件を満たさなくてはなりません。条件を満たすことができないと特別措置が受けられなくなりますから、十分な用意をして財産を譲渡する必要があります。

このように事業承継を行うには、入念な準備が必要です。細かい点まで検討した事業承継計画を作成して関係者の理解を得た上で、実行に移すようにしましょう。事業承継が上手く行かないと企業のブランドにも悪い影響を与え、企業価値を損ねることになってしまいます。経営者は元気な間に、事業継承のことも考えておくようにしましょう。

 

 

7.変えるものと変えないもの、企業ブランド・企業ビジョンの継承とアップデート

 

これは中小企業に限っての話ではないですが、これからの時代、中小企業といえども必ず意識しなくてはいけないポイント、それが「ブランディング」という考え方です。特に一般的に「ヒト・モノ・カネ・情報」などの資産総量が限られている中小企業だからこそ、その企業としての濃度や密度、エッジの鋭さを常に意識すべきと考えます。

時代はどんどん進んでいきます。また消費者の感覚や求めるモノも変化していきます。B2C企業はそのあたりの市場の反応に非常に敏感ですが、B2Bになると一気にその感覚が鈍る傾向にあります。ダイレクトに市場の声が入ってこないこともありますが、ビジネスの現場で最終消費者を見ることなく、間接的にしかエンドユーザーとの接点がないこともあげられます。

だからこそ、B2C、B2B関係なく企業として常に背筋を伸ばし、身を清めておくこと。すなわち、企業としての不変のモノ=本質的なビジョン・ミッション・バリューを固め、時代に合わせて表現を変えていくことと社内外に発信し続けることが重要です。先代の時代と2代目、3代目の時代とでは顧客の反応も変わるでしょうし、代替わり(事業承継)をすることで顧客の期待値も高まります。何か新しいことをやってくれるのではないかという前向きな期待と、中には後ろ向きな期待もあるでしょう。それらも含めて「代が変わった」訳ですから、自社ブランドの見直しを通じて、対外的に「私たちのポリシーは***です」と明確に打ち出すことがブランドイメージをコントロールする上で最も重要です。また、自社の製品やサービスも時代とともにアップデートしてくことも忘れてはなりません。中身は同じでもパッケージや製品案内などのリーフレットを新しくするだけで情報も刷新されますし、見た目も新しくなります。そういった情報やデザインのリフレッシュを行っていくことで社内の新陳代謝も促進されますし、対外的にも「あ、変わったな」「いい感じに変わったね」という変化を通じて、企業や製品・サービスに対する顧客や消費者の印象も変わっていきます。

事業承継は企業にとって大きなターニングポイントです。そのタイミングを逆にうまく活用し、ブランドイメージの刷新、またはブランドチェンジを図っていくことはこの時代において企業価値を高めていくための大きな要素ですし、端的に言えば企業の持続的成長を促し、社員の歩留まり(=帰属意識)を高め、通常の顧客を1ランク上の「ファン」へと育てていくためのアプローチと言えます。このブランディングというアプローチを、事業承継のタイミングでひとつの要素として認識し、サラッとブランドチェンジを行っていけるかどうかで事業承継後の企業の伸び率は大きく変わってくることでしょう。特に、企業規模に関係なく、企業としてもつ本質的な方向性やカラーの源となる「ビジョン」を継承すること。と同時に、企業がこれまでに培ってきたブランド資産、ブランドイメージをどう後継者に継承し、後継者は後継者としていまいる時代にそれらが合致しているのかどうか、十分に吟味する必要があります。そして、必要であればビジョンをはじめとするブランド資産を、今の時代にあわせてアップデートしていくことは決して忘れてはなりません。

本質を変える必要はありません。が、時代は変わっていきます。

その時代の流れに合わせて、関わる全てのステークホルダーに対してその企業に対して正しく理解してもらえているかどうか、そこが大事なのです。

 

 

士業的な観点からブランドコンサルタント的な観点まで幅広く事業承継時のポイントについて網羅してきました。

これがすべてとは言いませんが、重要な7つのポイントであることには間違いありません。これからの時代、より「個」というものが重要視され、多様化・複雑化していく社会においては「不確実な要素」が多くなってきます。その際に求められるのは企業としての戦略とデザインの融合=Strategy&Design、常に本質を見抜く力=Essential thinking、そして本質的な企業体力=Survivabilityです。

広い視野と本質を見抜く目、そして深く受け入れる心とともに、100年・200年続くための企業ブランドを常に磨き続けたいものです。

 

 

 


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