May 25, 2011 メーカーからソリューションベンダーへ(製造業・アウターブランディング事例・ブランドチェンジ) センターピアのアウターブランディング事例 ITサービスの発展に欠かせないサーバー群。センターピアは、それらを格納するサーバーラックの専業メーカーだ。2007年の設立から急成長を遂げている同社だが、昨今、ふたつの経営課題が浮き彫りになっていた。企業と製品の認知度向上と、社員のモチベーションアップである。これらの課題を「ブランディング」というアプローチで解決へ導いているのがフルスロットルだ。 成長を続けるサーバーラック業界。 先を見越しての「単なるメーカー」からの脱皮が急務でした。 ―まず、サーバーラック市場の最新動向を聞かせてください。 上野:現在、インターネットを活用したサービスを行う企業が増加しています。また、電子書籍や3Dコンテンツに代表されるような大容量のデータを配信するケースも今後さらに増えるでしょう。クラウドコンピューティングのサービスも本格化します。そこに必要なのはサーバーであり、それを支えるインフラがサーバーラックです。ですから、この市場もさらに広がっていくと考えています。 ―その環境において、サーバーラック専業メーカーとしての強みはどこにあるのでしょうか? 上野:サーバーラックはコンピューターの周辺機器として扱っている企業がほとんどで、大量生産・大量販売を前提とした売り方が主です。しかし、サーバーにはさまざまなサイズや形状があり、ラックへの搭載方法もまちまち。その点、当社はIT業界出身の社員が多いため、ラックへの適切な搭載方法をご提案でき、顧客のニーズに沿ってラックをカスタマイズできるのが強みです。 ―林社長はどのタイミングでプロジェクトに参加されたのでしょうか? 林:2009年末です。ちょうどセンターピア様が経営方針を「守り」から「攻め」へ転換された頃でした。 上野:当時、私が掲げた経営理念は社員にあまり浸透していませんでした。また、当社の良さや製品のメリットを社内外に伝えていたつもりだったのですが、なかなか理解してもらえませんでした。そんな時、林社長にお会いし、これらの課題を「ブランディング」という観点で解決したいと考えたのです。 林:今回は「アウターブランディング」、「インナーブランディング」という2つの手法で取り組んでいます。アウター用には企業の認知度やイメージをアップするためのWebサイト(以下、サイト)やツールを手がけています。加えて、それらを作ることにより、社員の皆さまの意識や行動も大きく変化してきたようです。実際、ミーティングでは今まで聞かれなかった意見が次々と自発的に飛び出してくるようになりました。 上野:はい。今回のプロジェクトでは、ビジョンボード、イントロダクションブック、会社案内、カタログ、サイトなど、様々な成果物が生まれました。これらを作る過程において、社員との打ち合わせを繰り返すことで、社員の中に自発的な行動が見られるようになり、社員との一体感も生まれました。 林:ビジョンボードの完成後は、社員の皆さまに社長の想いをしっかりと伝えるため、除幕式を行いました。こんな演出も時には必要かもしれまれせん。 社内外に広がるブランディングの効果 ―様々な手法を駆使することで、上野社長の理念や理想が立体的に伝わってきますね。 林:社長の想いや企業の方針を多角的な視点で翻訳し、すべてのステークホルダーの方々に正しく伝えることが、コーポレートブランディングでは重要です。また、サイトやパンフレットは、まず社内の皆さまに「気に入っていただける」ことを意識しました。社員の方々が自社を好きにならなければ、お客さまにも魅力的な説明ができないからです。 昨年はそのようなツールを用いて企業ブランドのベースを作りました。今年は6月に開催される展示会に向け、打合わせを進めています。その際も社員の皆さまが自発的に動き、以前にはない活発な議論が展開されています。 上野:それも、これまで行ってきたブランディング活動の成果でしょう。6月の展示会では業界初のコンセプトラックを出展します。これは全社員参加のプロジェクトです。社外に強くアピールできるものを作ることで、一体感はさらに増すと思います。 また、サイトもリニューアルしましたが、お取引先からは「外資系企業のようになった」とよく言われます。それは、これまでのサーバーラックメーカーのイメージを良い意味で覆しているからでしょう。さらに、今回のプロジェクトで制作した他のツールと有機的につながっているので、お客さまには当社のスタンスや考え方などを感じ取っていただいているようです。 林:ブランディングで最も重要なのは、中長期的な計画に沿って個々のブランディングアクションの効果を最大化させ、それぞれのポイントをつなぐことです。そして企業の成長スピードに合わせながら進めていくことで、本当の意味でのオンリーワンブランドが構築でき、自社の「ファン」を増やすことができるのです。