February 23, 2019 中小企業であることの意味〜メリット、デメリット、中小企業ならではの経営とは 大企業は知名度も高く、多くの人に注目される存在です。製品を購入する時あるいは就職を考える時には、大手のブランドネームがものをいうこともあるでしょう。 けれども、日本の企業の99.7%は中小企業です。日本の産業や経済、雇用を支えているのは多くの中小企業なのです。 そこで、この記事では改めて、中小企業とはどんな存在なのか、中小企業の強みを活かしていく経営とは何かを考えてみたいと思います。 Contents(目次)1 中小企業とは?1.1 数字で見る中小企業と大企業1.2 法制度における「中小企業」の定義1.3 中小企業の特徴2 中小企業であることのメリット、中小企業の強み3 中小企業に多く見られる課題、中小企業のデメリット4 中小企業の強みを活かす「ブランド」経営 中小企業とは? 数字で見る中小企業と大企業 まずは3つの円グラフをご紹介します。 画像引用元:『中小企業白書2011年版』 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/html/k211100.html 左から見ていくと、冒頭でも紹介したように、中小企業は日本国内に存在する企業の99.7%を占めています。 真ん中の円グラフからわかるように、働いている人の数で見ると、7割は中小企業の従業員となっています。 そして、製造業だけのデータになりますが、右の円グラフからは中小企業の付加価値額は約5割となっており、モノづくりの半分は中小企業によって支えられていることが分かります。 画像引用元:『中小企業白書2011年版』 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/html/k211100.html 法制度における「中小企業」の定義 中小企業とはその名の通り、中規模または小規模の企業のことですが、従業員が何人になれば大企業で、何人以下なら中小企業になるのでしょうか。 「中小企業」の定義は法律によって異なります。 中小企業基本法では業種ごとに、どのような企業を中小企業とみなすかが異なっています。以下のように「従業員の数」または「資本金の額」が規定以下の場合は「中小企業者」となります。 製造業/建設業 資本金3億円以下または従業員300人以下 卸売業 資本金1億円以下または従業員100人以下 サービス業 資本金5000万円以下または従業員100人以下 小売業 資本金5000万円以下または従業員50人以下 また、小規模企業者は従業員の数によって規定されています。(詳しくはこちら) 法人税法では、従業員の数は問いません。「資本金または出資金1億円以下」の企業が「中小法人」とされます。(ただし、大企業の子会社など、資本金が1億円以下でも中小企業には当たらない企業もあります。詳しくはこちら) このように中小企業を定義しているのは、規模が小さい中小企業を大企業と同じように扱うと安定した経営が難しくなるため、中小企業に優遇措置を設けているからです。中小企業の条件を満たした企業には、法人税率や法人住民税の軽減、欠損金の繰戻還付制度や交際費の一部損金算入などの、税制上の優遇措置が適用されます。 このほかにも、国や地方自治体では、中小企業を対象に助成金や補助金などの支援制度を整備していますが、これについても上記にご紹介したものとは異なる定義をしている場合があります。助成金や税の優遇措置などの手続きを行う際は、自社が中小企業に該当するのかを改めて確認するようにしましょう。 中小企業の特徴 単に、人数や資本金が異なるだけではなく、中小企業には特有の性質もあります。 まず、中小企業ではトップがオーナーでもあり、経営者でもあることが多いのが特徴です。大企業ではその企業の株を多く持っている、すなわちオーナーに当たる人と、実際の経営に当たる取締役社長などは別の人であることがほとんどです。 これは意思決定のスピードの差になって表れます。経営者とオーナーが別であれば、経営者は経営方針を決定するために株主の意向を聞かなくてはなりませんが、同じであれば、すぐに判断をくだすことができるからです。 また、中小企業はリソースが限られるというのも大企業と大きく異なる点です。 大企業は設備や人材に投資をする余裕もありますし、株や社債など、まとまった資金を確保する手段も豊富にあります。一方、中小企業は人手が限られるため、従業員が複数の業務を兼任していたり、経営者が経営に専念できず現場での業務も行っていたりすることが普通です。また、大規模な設備や最新の設備が導入できない場合もあります。そのため、生産性を上げるためには、業務の効率化を図らなくてはなりません。 中小企業であることのメリット、中小企業の強み 中小企業であるメリットは規模が小さく身軽であるということです。中小企業は従業員が少なく事業規模も小さいため、市場が小さくても細々と事業を続けられますし、大企業に比べて小回りがききます。大企業は大規模な設備を所有し、多数の従業員を雇っているため、簡単には経営方針を変えることができません。何百人、何千人を養えるだけの売上を立てなくてはなりませんし、社内調整にも時間がかかります。環境の変化は認識できていても、実際に動き出せるまでに時間がかかるのです。 また、先に見たように、中小企業ではオーナー社長が多く、これも意思決定の早さにつながると考えられます。現代のように変化の激しい時代は、スピード感のある経営が求められます。迅速な意思決定ができるという点は、中小企業の強みと言えるでしょう。 2011年に中小企業を対象に行われた調査でも、中小企業のメリットのトップは「迅速な意思決定」となっています。きめ細やかな対応ができることや、小回りがきくことも中小企業のメリットと認識されているようです。 画像引用元:『中小企業白書2011年版』 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/html/k211100.html また、中小企業では「企画・立案」、「試作」、「最終財製造」を強みと捉えている企業の割合が多いことも分かりました。設備や人材の面では不利だからこそ、きめ細やかな対応や独自性、スピード感など、中小企業ならではの持ち味を活かせる事業分野で力を発揮している企業が多いのでしょう。 画像引用元:『中小企業白書2011年版』 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/html/k211100.html 中小企業に多く見られる課題、中小企業のデメリット 中小企業は経営資源が乏しいことにより、さまざまな課題を抱えています。 知名度や信頼感が大企業に劣るため、人材の確保に苦慮する傾向があります。今後、労働人口が減っていけば、さらに人材獲得競争は厳しくなっていくでしょう。人手が限られていれば目の前の仕事で精一杯になり、先々に向けた活動をする余裕がなくなります。また、中核的な人材が不足すれば、事業の拡大や企業の成長にも支障をきたします。 また、金融機関から融資を受ける際や新規の取引先を開拓する際にも、中小企業では名の知れた大手に比べて信用力が低く、資金調達や新規開拓が難しくなります。 また、規模が小さいことは中小企業のメリットでもありましたが、デメリットとも言えます。大規模な事業や大規模な営業・販売が難しいのです。また、特定の人材に負担が集中しやすいという弊害もあります。 画像引用元:『中小企業白書2011年版』 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/html/k211100.html 中小企業の強みを活かす「ブランド」経営 それでは、中小企業の抱える課題を克服し、強みを活かしていくにはどのような経営をしていくべきなのでしょうか。 大企業と同じ土俵で戦っていては、勝ち目はありません。そこで、考えたいのが独自性を極めて、ブランドを確立することです。意思決定のスピードが早く身軽であるという点を活かし、最先端の分野に取り組んだり、ニッチな分野を極めたりすることで、大企業に劣らぬ知名度や企業価値を得ることができます。むしろ、ニーズの多様化が進む現在では、大企業が得意とするマスマーケティングの方が通用しにくくなっているといえるでしょう。 ブランドを際立たせるには、次の4つを重視した経営が肝要です。 人材重視の経営 商品や技術が優れているだけでは、よいブランドとは言えません。ブランドを完成させるのは人です。ブランドを確立している企業では、採用や教育などの場面でその企業のポリシーを貫きます。従業員をどう扱うか、どういう存在と捉えるかを明確にすれば、ミッションを共に遂行できる人材が揃います。その企業のDNAを持った人たちが企業の独自性を生むのです。 (→社員を対象としたインナーブランディングという手法もあります。) 利益重視の経営 デフレ下では値下げ競争になりがちですが、ブランディングができている企業では売上よりも利益を重視します。経営規模は大きくなくても、高い収益性を維持し、安定した経営を行っているのです。薄利多売では大企業には敵いません。利益率を重視した事業運営がブランドを持続させるのです。 現場重視の経営 ブランドは企業と顧客とのコミュニケーションのなかで育まれていきます。顧客との接点となる「現場」で、ブランドに即した体験を提供できるかがカギとなってきます。特に、サービス業や小売業では、店員の行動がブランドイメージにつながるため、従業員がブランドを理解し、日常業務にそれを反映することが大切です。ブランドを確立している企業では、自ら現場に足を運び、顧客に価値を提供できていることを確認する経営者も少なくありません。 BtoB企業ではエンドユーザーとの接点が少ないため、顧客の状況が見えにくくなりがちですが、ブランド形成のためにも、顧客はブランドをどう評価しているのか、今、市場で何が求められているのかといった「現場」の声に敏感でありたいものです。 サービス重視の経営 成長している中小製造業各社は共通して、顧客志向の経営を行っています。直接的、短期的に見れば自社にとっては得にならないと思われることでも、顧客が満足できるならば手間やコストを惜しみません。たとえば、セミナーのテーマ選びにもそうしたサービス精神が表れます。自社技術や自社製品の売り込みに終始するのではなく、顧客が望むテーマで企画します。売って終わりではなく、顧客との関係づくりを重視しているからです。 よいものを真面目につくっていれば、それでいいという姿勢ではなく、顧客の求めに応えるスタンスが強固なブランドを築くのです。 参考:中小公庫レポートNo.2003-3『中小企業のブランド戦略』 このようにして、ブランドを磨くことにより、中小企業でも大きな存在感を出すことができます。